「シランを植えてはいけない」という話を聞いて、庭に植えるのをためらっていませんか。
丈夫で美しい花を咲かせるシランですが、このように言われるのにははっきりとした理由があります。最大の要因は、その強い繁殖力にあります。シランは地下茎で広がる仕組を持っており、植えっぱなしにすると数年で庭の一角を埋め尽くしてしまう可能性があります。これがシラン 植えっぱなしのデメリットとしてよく挙げられる点です。
また、シランが密生することで、他の植物の生育を妨げる問題が出てくることもあります。さらに、花が終わった後に放置すると見た目が乱れるだけでなく、来年の花付きにも影響が出かねません。
しかし、これらの問題は適切な管理で十分に防ぐことができます。例えば、シランが花後にやるべき手入れをきちんと行い、シランの葉っぱはいつ切るかという適切な時期を知っておくことが大切です。さらに、定期的な株分けで増殖を抑える方法を実践すれば、シランの旺盛な生命力をコントロールすることも可能です。
この記事では、シランを植えてはいけないと言われる具体的な理由と、増えすぎを防いで上手に付き合っていくための管理方法や育て方のコツを詳しく解説します。
- シランを植えてはいけないと言われる具体的な理由
- 増えすぎを防ぐための賢い植え方と管理のコツ
- 花が終わった後や冬越しに関する正しい手入れの方法
- 増えすぎてしまった場合の対処法と処分時の注意点
シラン 植えてはいけないと言われる理由

この章では、シランがなぜ「植えてはいけない」と言われることがあるのか、その具体的な理由を、植物としての特性や管理上の注意点から詳しく掘り下げていきます。
シランが増えすぎるのは地下茎によるもの
シランが増えすぎることの最大の原因は、地下にある「偽球茎(ぎきゅうけい)」という器官によるものです。これは一般的に球根のように見える部分で、栄養を蓄える役割を持っています。
シランはこの偽球茎を横に連結させながら、毎年分裂して数を増やしていきます。地植えにすると、目に見えない土の中で着実に陣地を広げていくわけです。
加えて、ラン科の植物としては珍しく、種子でも発芽しやすい性質を持っています。このため、風で運ばれた種子が思いがけない場所で増えるケースも見られます。この地下茎と種子の両方による旺盛な繁殖力が、増えすぎる主な要因となっています。
植えっぱなしにすると庭が埋まる状態になる理由
前述の通り、シランは地下茎で増えるため、植えっぱなしにすると数年で庭がシランだらけになることがあります。特に地植えの場合、生育環境が良ければ偽球茎は驚くほどのスピードで増殖します。
最初は可憐な一株だったものが、2年、3年と経つうちに密集した群生(コロニー)を形成します。古い偽球茎も残りながら新芽が次々と出てくるため、株元は非常に混み合った状態になります。
手入れをせずに放置していると、花壇のレンガを押し上げるほどの力で広がり、庭の一角を占領してしまう事態になりかねません。これが「庭が埋まる」と言われるゆえんです。
他の植物の成長を妨げるリスク
シランが密集して増えすぎると、周囲にある他の植物の成長に悪影響を与える可能性があります。これには主に二つの理由が考えられます。
一つは、物理的な圧迫です。シランの葉や根が密生することで、他の植物が日光や土中の水分、養分を吸収しにくくなります。
もう一つは、「アレロパシー(他感作用)」と呼ばれる現象です。一部の情報によれば、シランは根から特定の化学物質(ミリタリンなど)を放出し、これが他の植物、特に繊細な草花や雑草の成長を抑制すると言われています。雑草対策としてはメリットにもなりますが、色々な花を植えている花壇では、意図せずお気に入りの花を弱らせてしまうリスクとなります。
放置すると見た目が乱れてしまう原因
花が咲き終わった後にシランを放置すると、庭全体の美観が損なわれる原因になります。シランの花は5月から6月頃に咲き終わりますが、その後、花がついていた茎(花茎)は枯れて茶色く変色していきます。
また、葉は秋まで青々としていますが、冬が近づくと光合成を終えて黄色く枯れ始めます。この枯れた花茎や葉をそのままにしておくと、非常にだらしない印象を与えてしまいます。特に梅雨時期には枯れた部分が湿気で腐りやすくなることもあり、美しい庭を保つためには、花後の適切な手入れが欠かせません。
シランが花が咲かないときに考えられるポイント
シランの花が咲かない場合、いくつかの原因が考えられます。最も一般的なのは、日照不足や肥料のバランス、根の状態です。シランは丈夫ですが、花を咲かせるためには一定の条件が求められます。
日照不足
シランは半日陰でも育ちますが、一日中ほとんど日の当たらない暗い場所では、株は育っても花芽がつきにくくなります。葉ばかりが不自然に茂る場合は、日照不足を疑う必要があります。
肥料のバランスが悪い
肥料に含まれる「チッソ(N)」は葉を育てる成分です。これを与えすぎると、葉は立派に茂りますが花が咲きにくくなります。花を咲かせるためには、「リン酸(P)」を多く含む肥料を適切に与えることが求められます。
根詰まりや株の老化
鉢植えで何年も植え替えをしていない場合、鉢の中で根がぎゅうぎゅうに詰まってしまい(根詰まり)、花が咲かなくなることがあります。地植えでも、数年植えっぱなしで株が密集しすぎると、同様に花付きが悪くなります。
不適切な手入れ
花が終わった後、まだ青々としている葉を早く切りすぎると、球根に栄養が蓄えられず、翌年の花が咲かなくなる原因となります。
シランが冬に枯れたように見えるのは自然なサイクル
シランは冬になると地上部が枯れますが、これは病気ではなく、休眠期に入るための自然な生理現象です。シランは「宿根草」に分類される植物です。
宿根草とは、冬になると地上部(葉や茎)は枯れてしまいますが、地下の根や球根(偽球茎)は生きたまま冬を越し、春になると再び新しい芽を出す植物のことを指します。
秋が深まり気温が下がってくると、シランの葉は光合成を終えて黄色く変色し、やがて枯れて倒れます。一見すると枯れてしまったように見えますが、土の中の偽球茎は春に向けてエネルギーを蓄えて休んでいます。このため、冬に枯れたからといって慌てて掘り起こしたりする必要はありません。
日陰でも育つが環境によっては徒長する場合
シランは日陰への耐性(耐陰性)があるため、暗い場所でも育ちますが、日光が不足しすぎると「徒長(とちょう)」してしまうことがあります。徒長とは、植物が光を求めて茎や葉を異常に長く伸ばす現象です。
暗い場所に植えられたシランは、少しでも多くの光を受けようとして、通常よりもヒョロヒョロと間延びした姿になります。徒長すると、葉の色が薄くなったり、株全体が弱々しい印象になったりします。
見た目が乱れるだけでなく、株が軟弱になるため病気にかかりやすくなるデメリットもあります。さらに、前述の通り、日光不足は花が咲かない原因にも直結します。シランを健康に育てるには、暗すぎる場所は避けるのが賢明です。

シラン 植えてはいけないを回避する管理と育て方

ここでは、「植えてはいけない」と言われる理由を理解した上で、シランの旺盛な繁殖力を上手にコントロールし、美しく育てるための具体的な管理方法と実践的なコツを解説します。
シランを植える場所の選び方(地植えの場合)
地植えでシランを育てる場合、場所選びが非常に大切です。「明るい半日陰」が最も適しています。シランは強い直射日光を嫌いますが、花を咲かせるためには適度な日光が必要となるからです。
例えば、午前中だけ日が当たり、午後は日陰になるような場所や、木漏れ日があたるような落葉樹の株元などが理想的です。
逆に、一日中強い西日が当たる場所では葉焼けを起こしやすく、暗すぎる日陰では徒長したり花が咲かなくなったりします。また、水はけが悪いと根腐れの原因になるため、ジメジメした場所は避け、腐葉土などを混ぜて土壌を改良しておくと良いでしょう。
鉢植えでコントロールするメリット
シランの「増えすぎる」という問題を最も簡単に回避する方法は、鉢植えで育てることです。鉢植えにすることで、シランの生育範囲を鉢の中に物理的に限定できます。
これにより、地下茎が庭に広がっていく心配が一切なくなります。鉢植えであれば、移動も簡単です。季節に応じて最適な日当たり(夏は涼しい半日陰、春は日当たりの良い場所など)に動かすことができます。
また、使う用土も市販のラン用培養土や山野草用の土を選べるため、庭の土質を気にする必要がありません。増えすぎて困るのが心配な方や、ベランダなど限られたスペースで楽しみたい方には、鉢植えでの管理が最適です。
株分けで増殖を抑える方法
地植えで増えすぎたシランは、「株分け」を行うことで増殖を抑え、株を若返らせることができます。株分けは、密集した偽球茎を分割して植え直す作業です。これにより、株元の混雑を解消し、風通しや日当たりを改善できます。
株分けの適期は、植え替えと同じ3月~4月、または10月~11月上旬頃です。株を掘り上げたら、古い土を落とし、偽球茎のつながりを手や清潔なハサミで切り分けます。
このとき、1株に偽球茎が最低でも3つ程度つくように分けるのがコツです。これ以上細かく分けると、体力を消耗し翌年に花が咲かなくなることがあるため注意が必要です。地植えの場合、2~3年に1度は株分けを兼ねて植え替えることをお勧めします。
ふえるのを防ぐための植え付け・間隔の工夫
地植えにする際に、あらかじめ物理的な仕切りを設けることで、シランが広がるのを防ぐことができます。シランは地下茎で横に広がるため、土の中で「壁」を作ってしまえば、それ以上広がることはできません。
根止めシート(ルートストッパー)の活用
最も確実な方法として、ホームセンターなどで販売されている「根止めシート」を土の中に垂直に埋め込み、植えたいエリアを囲う方法があります。深さ20~30cmほど埋め込めば、地下茎の伸長を防ぐ効果が期待できます。
プランター植え込み法
大きめのプラスチック製植木鉢やプランターの底を抜くか、あるいはそのままの状態で地面に埋め込み、その中にシランを植える方法もあります。これは、鉢植えのメリットを地植え風に取り入れる工夫です。
シランの葉っぱはいつ切るのがよいか
シランの葉を切る最適な時期は、秋が深まり、葉が自然に黄色く枯れ始めてからです。花が終わった後も、緑色の葉は光合成を続けています。この光合成によって作られた栄養分が、地下の偽球茎に蓄えられ、翌年の花を咲かせるためのエネルギー源となります。
花が終わったからといって、夏場などにまだ青々とした葉を切ってしまうと、球根が十分に太れず、翌年の花付きが悪くなったり、最悪の場合咲かなくなったりします。
葉が光合成の役目を終え、自然に黄色く枯れてきたら、それは「栄養を蓄え終わった」という合図です。このタイミングで、地際からバッサリと刈り取って問題ありません。
花が終わった後の手入れの手順
シランの花が終わったら、「花茎切り」を行うことが、来年の花付きと株の健康を保つために大切です。花を咲かせたままにしておくと、植物は種を作るためにエネルギーを使おうとします。
このエネルギーを種ではなく球根に集中させるため、早めに花茎を取り除きます。花がしぼんで色あせてきたら、花がついていた茎(花茎)を、できるだけ根元に近い位置で清潔なハミを使って切り取ります。
この作業により、株の消耗を防ぎ、地下の偽球茎がより充実します。前述の通り、この時点では葉はまだ切らず、枯れるまでそのままにしておくことがポイントです。
シランの適切な植え替え時期
シランの植え替えは、株の休眠期にあたる時期に行うのが基本です。生育期に植え替えると、根や株にダメージを与えてしまい、その後の成長に悪影響が出ることがあります。休眠期であれば、株への負担を最小限に抑えられます。
適期は、春の新芽が動き出す直前の3月~4月、または地上部が枯れ始める秋の10月~11月上旬頃です。
鉢植えの場合は、1~2年に1回、根詰まりを防ぐために一回り大きな鉢に植え替えるか、株分けをして同じ鉢に植え直します。地植えの場合でも、増えすぎを防ぎ、株を若返らせるために、2~3年に1回を目安に掘り上げて株分けを兼ねて植え替えるとよいでしょう。
病気・葉の変色が起きる原因と対処
シランは非常に丈夫な植物ですが、特定の環境下では病気にかかったり、葉が変色したりすることがあります。主な原因は、ウイルスの感染、過湿による細菌、または不適切な栽培環境です。
ウイルス病
ラン科植物特有のウイルス病(シンビジウムモザイクウイルスなど)に感染することがあります。葉にモザイク状の淡い斑点や筋模様が現れた場合、この病気が疑われます。残念ながら治療法はなく、他の株への伝染を防ぐため、株ごと処分する必要があります。感染した株を切ったハサミを介して伝染するため、園芸道具の消毒は徹底してください。
軟腐病(なんぷびょう)
梅雨時期など高温多湿の環境で発生しやすい細菌性の病気です。偽球茎が水っぽく腐り、悪臭を放ちます。水はけの悪い土壌で起こりやすいため、植え付け時の土壌改良が予防になります。
葉焼け
病気ではありませんが、夏の強い直射日光に当たると葉が白っぽく焼けたり、茶色く枯れたりします。これは生理現象なので、置き場所を半日陰に移すか、日よけをすることで防げます。
害虫
新芽や蕾にはアブラムシが、花や葉にはナメクジが発生することがあります。見つけ次第、殺虫剤などで駆除しましょう。
増えすぎたシランを処分する際の注意点
増えすぎて不要になったシランを処分する際は、絶対に自然の野山や公園などに捨ててはいけません。園芸用に栽培されているシラン(交雑種を含む)が野生環境に逸出すると、元々その地域に自生している在来のシラン(準絶滅危惧種)と交雑し、遺伝子汚染を引き起こす危険性があるためです。
処分する場合は、掘り上げた偽球茎や株を数日間天日干しにするなどして完全に乾燥させ、枯死させた上で、各自治体のルールに従って「燃えるゴミ」として出してください。丈夫な植物であるため、土に埋めたり放置したりすると、そこから再び芽を出す可能性があります。生態系を守るためにも、適切な処分方法を守ることが大切です。
地下茎が残ってしまったときの対策
シランを撤去した後も、土の中に偽球茎(地下茎)の破片が残っていると、そこから再び芽を出すことがあります。シランは非常に生命力が強く、小さな偽球茎のかけらからでも再生することが可能です。
完全に撤去するためには、根気よく対処する必要があります。まず、できるだけ深く土を掘り起こし、スコップや熊手などを使って、目に見える偽球茎を一つ残らず取り除きます。
その後も、数ヶ月は様子を見て、もし新しい芽が出てきたら、その都度、芽の根元から掘り起こして偽球茎ごと取り除く作業を繰り返します。この作業を繰り返すことで、土の中に残った偽球茎の養分を使い果たさせ、やがて生えてこなくなります。

まとめ|シラン 植えてはいけないと言われる理由と管理のコツを再確認

シランを植えてはいけないと言われる背景には、その旺盛な繁殖力があります。シランが増えすぎるのは地下茎によるもので、植えっぱなしにすると庭が埋まる状態になるほどです。この増殖力が、他の植物の成長を妨げるリスクや、放置すると見た目が乱れてしまう原因となっていました。
しかし、これらの問題は適切な管理と育て方で十分に回避できます。例えば、シランが花が咲かないときに考えられるポイントとして日照不足や根詰まりがあり、適切な場所選びが大切です。また、シランが冬に枯れたように見えるのは自然なサイクルであり、日陰でも育つが環境によっては徒長する場合があるといった特性を理解しておくことも必要です。
「シラン 植えてはいけない」を回避するには、まずシランを植える場所の選び方が鍵となります。地植えの場合は根止めシートなどでふえるのを防ぐための植え付け・間隔の工夫をし、鉢植えでコントロールするメリットを活かすのも良い方法です。増えてきたら株分けで増殖を抑える方法を実践しましょう。
日々の手入れとしては、花が終わった後の手入れの手順を踏み、シランの葉っぱはいつ切るのがよいか(秋に枯れてから)という適切な時期を守ることが、来年の花付きにつながります。シランの適切な植え替え時期(春か秋)にメンテナンスを行い、病気・葉の変色が起きる原因と対処法を知っておけば、健康に育てられます。万が一、増えすぎたシランを処分する際の注意点を守り、生態系に配慮することも忘れてはなりません。もし地下茎が残ってしまったときの対策が必要になっても、根気よく取り除くことで対応が可能です。
この記事で解説した、シランと上手に付き合うためのポイントを以下にまとめます。
- シランが「植えてはいけない」と言われる最大の理由は、地下茎による旺盛な繁殖力であること
- 増えすぎを防ぐには、鉢植えで管理するか、地植えの場合は根止めシートなどで物理的に範囲を制限することが有効であること
- 花が咲かない原因は「日照不足」「肥料バランス」「根詰まり」などが考えられること
- 花が終わったら花茎だけを切り、葉は秋に自然に枯れるまで切らずに、球根に栄養を蓄えさせること
- 増えすぎた株は、2~3年に一度、春か秋に株分けを兼ねて植え替えることで管理できること
シランは、その性質を正しく理解し、少しの手間をかけることで、誰でも美しく楽しめる丈夫な花です。管理のコツさえつかめば、庭を彩る素晴らしいパートナーとなってくれるでしょう。

