秋の訪れとともに、甘く優しい香りを漂わせる金木犀。その魅力的な香りから、庭に植えたいと考える方も多いことでしょう。しかし、「金木犀は庭に植えてはいけない」という話を聞いて、苗木の購入をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、金木犀を庭に植えること自体は問題ありません。ただし、「植えてはいけない」と言われるのには、いくつかの具体的な理由が存在します。
例えば、金木犀は成長すると想像以上に大きくなることがあり、そのデメリットを知らずに庭に植えると、管理が難しくなってしまう場合があります。また、金木犀の強い香りが、時には近所迷惑と受け取られる可能性も否定できません。
さらに、風水への影響を心配する声や、金木犀の花言葉怖いという噂が気になる方もいるでしょう。この記事では、金木犀を植えてはいけないとされる理由を一つひとつ丁寧に解説します。あわせて、鉢植えでの管理方法など、デメリットを回避しながら金木犀の美しい花と香りを楽しむための具体的な対策をご紹介します。
- 金木犀を植えてはいけないと言われる具体的な理由
- 根の強さや害虫、近所迷惑などのデメリット
- 風水における金木犀の適切な方角
- 鉢植えなどトラブルを避ける育て方のコツ
金木犀を庭に植えると後悔する?主なデメリットとは

金木犀を庭に植えると後悔するかもしれないと言われるのは、その生態や特性に理由があります。ここでは、なぜ植えてはいけないと言われるのか、その具体的な理由として根の強さや近所迷惑の可能性、害虫、管理の手間、日照条件、そして風水に関する注意点を詳しく解説します。
根が強く、塀や配管を傷めるリスクがある
金木犀を植えてはいけない理由の一つに、根の張り方が関係しています。金木犀は地中深くに太い根を伸ばすタイプ(深根性)ではありませんが、地表近くに細い根を広範囲に張り巡らせる性質(浅根性)を持っています。
このため、建物の基礎やブロック塀のすぐそばに植えてしまうと、成長した根が基礎の表面を覆ったり、塀を押したりする可能性が考えられます。また、古い配管や既にヒビが入っている排水管などがあると、根がわずかな隙間から侵入し、詰まりや破損を引き起こすリスクもゼロではありません。
対策としては、家や塀、配管が埋設されていそうな場所からは十分な距離(最低でも1〜2メートル以上)を離して植えることが大切です。
落ち葉や香りで「近所迷惑」になるケースも
金木犀の最大の魅力である香りは、時に「近所迷惑」と受け取られることがあります。秋に一斉に咲く花の香りは非常に強く、遠くまで届きます。この香りが好きな人ばかりとは限らず、強すぎると感じる人や、過去に流行したトイレの芳香剤を連想して苦手意識を持つ人もいるためです。
また、花の時期が終わると、オレンジ色の小さな花が大量に地面に落ちます。これが風で隣家の敷地に飛んでいったり、道路にはみ出して掃除の手間をかけさせたりすることも、トラブルの原因となり得ます。
隣家との境界線近くや、風向きを考慮せずに植えることは避けた方が賢明です。
虫(チャドクガ・アブラムシなど)がつきやすい理由
金木犀は、特定の害虫がつきやすい側面も持っています。特に注意が必要なのは、カイガラムシやアブラムシ、ハダニです。これらの害虫は、葉や枝の汁を吸って木を弱らせるだけでなく、その排泄物が原因で葉や枝が黒くなる「すす病」を誘発します。
すす病が広がると、光合成が妨げられて生育が悪くなり、見た目も損なわれます。また、構成案にあるチャドクガは、主にツバキ科の植物(サザンカやツバキ)を好むため、金木犀(モクセイ科)での発生は稀とされていますが、風通しが悪いと他の害虫が発生しやすくなります。
枝葉が混み合い、風通しが悪くなると害虫の温床になりやすいため、適切な管理が求められます。
剪定や掃除が大変で手入れを怠ると見た目が悪化
金木犀は生育旺盛で、剪定をせずに放置していると、高さが7メートルから8メートルにも達する大木になることがあります。大きくなりすぎると、庭の日当たりが悪くなるだけでなく、枝が混み合って害虫も発生しやすくなります。
また、これほど大きくなると、素人が自分で剪定するのは非常に困難です。かといって業者に依頼すれば費用がかかります。手入れを怠ると樹形が乱れ、見た目が悪化するだけでなく、花付きも悪くなってしまいます。
さらに、前述の通り、開花後には大量の花が落花するため、その掃除も毎年の手間となります。
植える場所によっては日照不足で花が咲かないことも
金木犀は、やや日陰を好む性質があるとされていますが、花をたくさん咲かせるためには適度な日光が必要です。
まったく日が当たらない場所や、建物の北側などで常に日陰になる場所に植えてしまうと、日照不足で枝ばかりが間延びし、花付きが極端に悪くなることがあります。最悪の場合、花がほとんど咲かないという結果にもなりかねません。
一方で、真夏の直射日光が一日中強く当たりすぎる場所では、葉が焼けて傷んでしまう「葉焼け」を起こすこともあります。金木犀にとっては、適度な日当たり(例えば半日陰や、午前中だけ日が当たる場所)が理想的です。
【風水・方角】金木犀を植えるのに良い位置・避けたい方角
金木犀を植えてはいけないという噂とは反対に、風水ではむしろ縁起の良い木とされています。その理由は、強い香りが邪気を払い、良い運気を呼び込む「魔除け」の効果があると信じられているためです。
風水では、金木犀を植えるのに適した方角があるとされています。
おすすめの方角
一般的に良いとされるのは、北東(鬼門)、東、東南、そして南西(裏鬼門)です。
- 東、東南:木の気を持つ方角であり、金木犀の成長を促し、良い香りを広げてくれます。
- 北東(鬼門)、南西(裏鬼門):これらの方角は「気の通り道」とされ、特に南西の裏鬼門に金木犀を植えると、邪気を払う効果が強まり、金運アップにもつながると言われています。
避けた方が良いとされる方角
明確に「悪い」とされる方角は少ないですが、家の中心から見て「凶」とされる方角や、玄関を完全に塞いでしまうような位置は、良い気の流れを妨げる可能性があるため、避けた方が無難かもしれません。風水の観点からも、管理のしやすさからも、バランスの取れた位置選びが求められます。

金木犀をトラブルなく育てるコツ

「植えてはいけない」とされるデメリットを理解した上で適切な対策を講じれば、金木犀は素晴らしい庭木となります。ここでは、デメリットを回避して金木犀の美しい花と香りを楽しむため、鉢植えでの管理方法や地植えする場合の場所選び、具体的な剪定や害虫予防、長期的なメンテナンスのコツを紹介します。
地植えより「鉢植え」で管理するのがおすすめな理由
金木犀のデメリットとして挙げた「大きくなりすぎ」や「根によるトラブル」を最も簡単に回避できるのが、鉢植えでの管理です。
鉢植えで育てると、根の生育範囲が鉢の中に制限されるため、地植えのように際限なく大きくなるのを防ぐことができます。高さもコンパクトに保ちやすく、ベランダや玄関先など、限られたスペースでも楽しむことが可能です。
また、鉢植えであれば移動が可能なため、台風の時には軒下に避難させたり、夏場の強すぎる日差しを避けたりと、環境を調整しやすい点もメリットです。もし将来的に引っ越すことになっても、大切な金木犀を一緒に連れて行くことができます。
植える場所は「風通し」「日当たり」「隣家との距離」を重視
もし地植えで育てる場合は、植える場所の選定が非常に大切です。失敗を避けるためには、以下の3つのポイントを必ず確認してください。
- 風通し:害虫や病気の発生を抑えるために、風通しの良い場所を選びます。壁際や他の木が密集している場所は、空気がよどみやすいため避けた方がよいでしょう。
- 日当たり:前述の通り、花付きを良くするためには適度な日照が必要です。一日中日陰になる場所は避け、かといって西日が強く当たり続ける場所も避けるのが理想です。半日陰や午前中に日が当たる場所が適しています。
- 隣家との距離:香りのトラブルや、落ち葉・枝の越境を防ぐため、隣家や道路との境界線からは十分な距離を確保します。根張りのことも考慮し、塀や建物からも離して植える必要があります。
落ち葉や香りトラブルを防ぐ剪定と掃除の工夫
近所迷惑になる可能性がある「香り」や「落ち葉」の問題は、剪定と掃除の工夫である程度対策できます。
香りが強すぎる場合は、剪定によって花の数を調整するという方法があります。金木犀は枝全体に花をつけるため、枝の数を減らせば、必然的に花の量も減り、香りが少し穏やかになります。
また、落ち葉(落花)の掃除については、花が散り始めたらこまめに掃き掃除をすることが基本です。特に雨が降る前に掃除しておくと、花びらが地面に張り付いて掃除しにくくなるのを防げます。隣家の敷地に飛ばないよう、風の強い日を避けて掃除するなどの配慮も有効です。
虫を寄せつけない予防方法と季節ごとの管理ポイント
害虫を防ぐためには、予防がなによりも大切です。まず基本となるのは、適切な剪定によって「風通し」と「日当たり」を確保することです。枝葉が混み合って湿気がこもる場所を、害虫は好みます。
季節ごとの管理
- 春(新芽の時期):アブラムシが発生しやすい時期です。見つけ次第、薬剤を散布するか、数が少なければ粘着テープなどで取り除きます。
- 梅雨〜夏:カイガラムシやハダニが発生しやすくなります。特にハダニは乾燥を好むため、葉の裏にも水をかける「葉水」が予防に効果的です。カイガラムシは幼虫の時期(5月〜7月頃)に薬剤散布するのが最も効果が高いとされています。
- 冬:カイガラムシの成虫は、歯ブラシなどでこすり落とすことができます。また、冬の間に剪定を行い、風通しを良くしておくことが翌年の予防につながります。
手間を減らすなら鉢植え+定期的な植え替えが安心
前述の通り、鉢植えは地植えに比べて多くの手間を減らすことができます。剪定も小規模で済み、根の心配もありません。
ただし、鉢植えには鉢植え特有の手間もあります。それは「水切れ」と「植え替え」です。鉢の中の土は乾燥しやすいため、特に夏場は水切れに注意が必要です。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れるまでたっぷりと与えてください。
また、数年に一度(目安は2〜3年に一度)は、根詰まりを防ぐために一回り大きな鉢に植え替える作業が求められます。この手間をどう捉えるかですが、地植えで大木になった場合の剪定の手間と比較すれば、管理しやすいと言えるでしょう。
長く楽しむための金木犀の育て方とメンテナンスのコツ
金木犀と長く付き合っていくためには、基本的な育て方を守ることが鍵となります。
植え付け・植え替え
植え付けや鉢植えの植え替えに適した時期は、木の成長が緩やかな2月下旬から3月上旬、または9月から10月とされています。
肥料
肥料は年に2回与えるのが一般的です。
- 寒肥(かんごえ):2月頃に、ゆっくりと効く有機質肥料や緩効性化成肥料を株元に与えます。これは、春からの成長を助けるためのものです。
- お礼肥(おれいごえ):花が終わった後(10月〜11月頃)にも同様の肥料を与えます。これは、花を咲かせるために使った木の体力を回復させ、翌年の花付きを良くするために行います。
剪定
剪定の最適な時期は、花が終わった直後、または新芽が動き出す前の冬(2月〜3月頃)です。金木犀の花芽は、春に伸びた枝に夏頃作られるため、夏以降に剪定すると花芽ごと切り落としてしまい、秋に花が咲かなくなります。花後か冬に、混み合った枝や不要な枝を間引き、樹形を整えるようにしましょう。

まとめ:金木犀を植えてはいけない理由とトラブルなく育てるコツ

金木犀を植えてはいけないと言われる背景には、いくつかの具体的な理由があることを解説してきました。
地植えにすると、根が強く、塀や配管を傷めるリスクがあることや、剪定や掃除が大変で手入れを怠ると見た目が悪化するほど大きくなる可能性があります。また、その強い香りが落ち葉や香りで「近所迷惑」になるケースも考えられます。植える場所によっては日照不足で花が咲かないこともあり、虫(チャドクガ・アブラムシなど)がつきやすい理由として風通しの悪さが挙げられます。【風水・方角】金木犀を植えるのに良い位置・避けたい方角についても、縁起が良いとされる一方で、植える場所への配慮が求められます。
しかし、これらの問題点の多くは、適切な対策を講じることで回避が可能です。
- 金木犀を植えてはいけないと言われるが、多くは管理上の注意点であり迷信も含まれる
- 根の張りや成長の早さを考慮し、建物や塀から離して植える
- 香害や落ち葉トラブルを避けるため、隣家との距離を保ち、こまめな掃除を心がける
- 鉢植えでの管理は、大きさや根の問題を手軽に解決できる有効な手段である
- 剪定(花後・冬)と施肥(冬・花後)を適切に行い、日当たりと風通しを保つことが病害虫予防と花付きの鍵となる
例えば、地植えより「鉢植え」で管理するのがおすすめな理由として、コンパクトさを維持できる点が挙げられます。地植えの場合でも、植える場所は「風通し」「日当たり」「隣家との距離」を重視することが大切です。落ち葉や香りトラブルを防ぐ剪定と掃除の工夫を実践し、虫を寄せつけない予防方法と季節ごとの管理ポイントを押さえることで、健康な状態を保てます。手間を減らすなら鉢植え+定期的な植え替えが安心な選択肢となり、長く楽しむための金木犀の育て方とメンテナンスのコツを理解すれば、毎年美しい花と香りを楽しませてくれるでしょう。
金木犀は、その特性を理解し、少しの手間をかけてあげることで、秋の訪れを豊かに彩ってくれる素晴らしい樹木です。


