庭のアクセントとして人気のトクサですが、「トクサを植えてはいけない」という声を耳にしたことはありませんか。結論から言うと、軽い気持ちで庭に地植えするのは、後悔につながる可能性があります。
植えてはいけないと言われる最大の理由は、その強すぎる繁殖力にあり、多くの方が植えて後悔しています。地下茎が広がるスピードは想像以上で、増えすぎを防ぐ方法として期待される防根シートの効果も万全ではありません。地下茎の対策を怠ると、根が張りすぎることへの注意点として挙げられるように、コンクリートの壁を壊したり、隣家とのトラブルになることも少なくありません。
また、一度広がってしまうと駆除は極めて困難です。安全に楽しむのであれば鉢植えでの栽培が現実的ですが、この記事では、地植えを検討している方のために、トクサがもたらすリスクと、その代わりとなる植物のおすすめまで詳しく解説していきます。
- トクサを植えてはいけないと言われる具体的な理由
- 地下茎の繁殖を防ぐための具体的な対策と限界
- 放置した場合に起こりうるトラブルやデメリット
- トクサの代わりに庭で楽しめるおすすめの植物
「トクサを植えてはいけない」と断言される5つの理由

この章では、トクサを庭に植えるべきではないとされる最も根本的な理由を5つの観点からみていきます。多くの方が後悔する原因となる繁殖力の問題から、スギナとの比較、安全な栽培方法、そして気になる毒性の有無まで、トクサの基本的な特性とそのリスクについて詳しく解説していきます。
植えて後悔する一番の理由
多くの方がトクサを植えて後悔する一番の理由は、その見た目のシンプルさからは想像もつかないほどの旺盛な繁殖力にあります。
植え付けた当初は、数本の茎が和モダンな雰囲気を演出し、庭の素敵なアクセントとして機能します。しかし、春先から夏にかけて、地下茎は人の目に見えない地中で四方八方に広がり、数メートル離れた予想外の場所から次々と新しい芽を出すようになります。
この繁殖スピードは非常に速く、1年後には当初の数倍の範囲に広がっていることも珍しくありません。庭石の隙間や他の植物の根元など、場所を選ばずに生えてくるため、気づいた頃には庭の景観を損なう厄介な存在へと変わってしまうのです。この「気づいた時には手遅れ」という状況が、後悔を生む最大の原因と考えられます。
強すぎる繁殖力とスギナとの違い

トクサの繁殖力を理解する上で、しばしば比較対象となるのが同じトクサ科の植物であるスギナです。どちらも地下茎で増える非常に厄介な植物として知られていますが、いくつかの違いがあります。
スギナは春に「つくし」としての胞子茎を出し、その後、緑色の栄養茎を展開します。畑や空き地などで猛威を振るう姿はよく知られています。一方、トクサは常緑性で、スギナのように姿を変えることはありません。茎も太く、高さも50cmから1mほどに成長するため、スギナよりも存在感があります。
共通しているのは、地中深くまで地下茎を伸ばし、わずかな断片からでも再生する驚異的な生命力です。このため、一度庭に根付いてしまうと、完全に除去するのはプロでも難しい作業となります。むしろ、観賞用に庭へ迎え入れたトクサの方が、駆除したい雑草であるスギナ以上に根絶が困難になると言えるかもしれません。
地下茎が広がる具体的な対策
前述の通り、トクサの地下茎が広がるのを防ぐには、植え付けの段階で物理的な障壁を設けることが不可欠です。
最も一般的な対策は、防根シートやあぜ板を地中に埋め込む方法です。これは、トクサを植えたいエリアの周囲を、深さ30cmから50cm程度掘り、プラスチックや樹脂製の硬い板で囲うというものです。この物理的な壁によって、地下茎が外に伸びていくのを防ぎます。
しかし、この対策も完璧ではありません。シートの繋ぎ目にわずかな隙間があったり、シートの深さが足りなかったりすると、地下茎はそこから巧みに抜け出してしまいます。また、長年の間に土圧でシートが破損する可能性も考慮する必要があります。したがって、防根シートを設置した場合でも、定期的に周囲を確認し、はみ出してきた芽を早期に摘み取るといった継続的な管理が求められます。
安全に楽しむなら鉢植えでの栽培
地植えに伴うリスクを避け、トクサの持つ涼しげな魅力を安全に楽しむための最も確実な方法は、鉢植えで栽培することです。
鉢やプランターで育てることで、地下茎が広がる範囲を物理的に完全に制限できます。これにより、庭の他の植物を駆逐したり、意図しない場所から芽を出したりする心配が一切なくなります。
また、鉢植えであれば移動も簡単です。日当たりや風通しの調整が容易になるだけでなく、玄関先やウッドデッキなど、好きな場所に置いて和モダンな空間を演出できます。
注意点としては、地植えに比べて水切れしやすいことが挙げられます。特に夏場は土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与える必要があります。数年に一度は、根詰まりを防ぐために一回り大きな鉢への植え替えや株分けを行うと、健康な状態を長く保てるでしょう。
トクサに毒性はある?ペットへの安全性
トクサの毒性について心配される方もいますが、人間が触れたり、少量口にしたりして重篤な症状を引き起こすような強い毒はありません。古くは歯磨きや研磨剤として利用されてきた歴史もあります。
ただし、注意が必要なのは、トクサ科の植物に含まれる「チアミナーゼ」という酵素の存在です。この酵素はビタミンB1を分解する作用を持っており、特に馬などが大量に摂取し続けると、ビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があると報告されています。
犬や猫などのペットが、好奇心から少量かじってしまう程度であれば、直ちに大きな問題になる可能性は低いと考えられます。しかし、日常的に食べてしまうような環境は避けるべきです。もしペットがトクサを大量に食べた後に、ふらつきや嘔吐などの異常を示した場合は、速やかに獣医師に相談することが賢明です。

なぜ危険?「トクサを植えてはいけない」と言われる被害

トクサを安易に植えることの危険性は、単に増えすぎて困るというだけにとどまりません。この章では、トクサの強すぎる生命力が引き起こす、より深刻な被害やトラブルについて解説します。根がもたらす物理的な損壊から、近隣住民との関係悪化、さらには風水といった文化的な側面まで、具体的なリスクを紹介します。
根が張りすぎることへの注意点
トクサの根、正確には地下茎は、土の中で密集したネットワークを形成します。この根が張りすぎることで、庭の土壌環境に様々な影響を及ぼす可能性があります。
第一に、他の植物の生育を阻害する点が挙げられます。トクサの地下茎は非常に密に広がるため、周囲の土の栄養分や水分を独占してしまいます。これにより、近くに植えられている草花や低木が弱ってしまったり、最悪の場合、枯れてしまったりすることがあります。
第二に、土壌の水はけを悪化させる可能性も考えられます。密に張り巡らされた地下茎が土を固め、水の通り道を塞いでしまうのです。水はけの悪い環境は、多くの植物にとって根腐れの原因となり、庭全体の健全な育成環境を損なうことにつながりかねません。
コンクリートの壁を壊す危険性
「トクサがコンクリートを壊す」という話は、決して大げさなものではありません。もちろん、トクサの地下茎がドリルやハンマーのように直接コンクリートを破壊するわけではありません。しかし、その成長力は、既存のひび割れや隙間を押し広げるには十分すぎるほどの力を持っています。
例えば、建物の基礎やブロック塀、コンクリート製の土留めなどに、経年劣化によるわずかな亀裂があったとします。トクサの地下茎の先端は非常に硬く、そうした隙間に侵入して成長を続けます。成長に伴って茎は太くなり、内部から強力な圧力をかけ、やがて亀裂を大きなひび割れへと拡大させ、最終的には構造物を損壊させてしまうことがあるのです。このため、建物のすぐそばにトクサを植えるのは非常に危険な行為と言えます。
隣の家とのトラブルに発展する可能性
トクサが引き起こす問題の中で、最も避けたいのが近隣トラブルです。トクサの地下茎は、地中では境界線を認識しません。自宅の庭に植えたトクサが、気づかないうちに地下茎を伸ばし、隣家の敷地内に侵入してしまうケースは少なくありません。
隣家の庭にトクサの芽が出てきた場合、相手にとっては迷惑な雑草でしかありません。もし隣家の方がガーデニングを趣味にしていたり、手入れの行き届いた芝生を大切にしていたりする場合、トクサの侵入は深刻な問題となります。
一度侵入を許してしまうと、その駆除には相手方にも多大な労力を強いることになります。これが原因でご近所との関係が悪化し、大きなトラブルに発展する可能性も十分に考えられます。自分の敷地内だけで管理できるという安易な考えは、通用しないことを理解しておく必要があります。
風水では縁起が悪いと言われることも
植物を庭に植える際、風水や縁起を気にする方もいらっしゃるでしょう。科学的な根拠はありませんが、文化的な観点から見ると、トクサは必ずしも良い意味合いを持つ植物とはされていないようです。
風水において、トクサは「陰」の気が強い植物と見なされることがあります。その真っ直ぐすぎる姿が、変化や柔軟性に欠けると解釈されたり、冬でも枯れない常緑の性質が「停滞」をイメージさせたりすることが理由として挙げられます。また、枯れたトクサが茶色く残る様子が、寂しさや衰退を連想させるため、家の運気を下げるという考え方もあるようです。
これらはあくまで一つの考え方であり、信じるかどうかは個人の自由です。しかし、家の繁栄や家族の健康を願って庭づくりをする方にとっては、考慮に入れておきたい情報かもしれません。
増えすぎを防ぐ方法と防根シートの効果
前述の通り、トクサが増えすぎるのを防ぐためには、植え付け時の対策が鍵となります。その中心的な役割を担うのが防根シートです。
防根シートは、地下茎の伸長を物理的に食い止めるための最後の砦となります。その効果を最大限に引き出すためには、適切な製品選びと正しい施工が不可欠です。シートには厚みや材質に様々な種類がありますが、トクサのように貫通力の強い植物には、厚手で丈夫な製品を選ぶべきです。
施工時には、シートの深さを最低でも30cm以上、できれば50cm確保することが望ましいです。また、シート同士を繋ぎ合わせる場合は、10cm以上重ね合わせ、隙間ができないように厳重に固定する必要があります。
ただし、これらの対策を講じても100%防げる保証はありません。あくまでリスクを低減させるための策と捉え、継続的な監視と管理を怠らない姿勢が大切になります。

「トクサを植えてはいけない」場合の対処法と代替え植物

これまでトクサを植えることのリスクについて詳しく見てきましたが、それではすでに植えてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。また、トクサの持つ縦のラインを庭に取り入れたいけれど、リスクは避けたいという方にはどのような選択肢があるのでしょうか。この章では、具体的な駆除方法から、トクサの代わりとなるおすすめの植物までを紹介します。
最終手段としての駆除方法
もし庭に広がってしまったトクサを完全に駆除したい場合、それは非常に根気のいる作業になることを覚悟しなければなりません。主な方法としては、「手作業で掘り取る方法」と「除草剤を使用する方法」の2つが考えられます。
手作業による駆除
最も確実ですが、最も労力を要する方法です。スコップや鍬を使い、トクサが生えている範囲の土を深くまで掘り返し、地下茎を丁寧に取り除いていきます。地下茎は細かくちぎれやすいため、わずかな断片も残さないよう、ふるいにかけるなどして徹底的に除去する必要があります。一度で終わらせることは難しく、数ヶ月から数年にわたり、新たに出てくる芽を根気よく抜き続ける作業が求められます。
除草剤による駆除
手作業での駆除が難しい広範囲に広がってしまった場合に選択肢となります。トクサには、根まで枯らす効果のある「グリホサート系」の除草剤が比較的有効とされています。ただし、トクサは表面が硬く薬剤が浸透しにくいため、散布する前に茎の表面を傷つけたり、薄める濃度を濃くしたりといった工夫が必要になる場合があります。周囲の植物にも影響が出る可能性があるため、使用には細心の注意が必要です。一度の散布で根絶することは難しく、複数回の処理が必要になることが多いでしょう。
植える場所で特に注意すべき点
どうしてもトクサを地植えしたいと考える場合、植える場所の選定が極めて重要になります。以下のポイントを満たす場所を選ぶことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
第一に、コンクリートやブロックで四方が完全に囲まれている花壇やスペースを選ぶことです。建物の基礎から離れており、地下で他の場所と繋がっていない独立した区画が理想的です。
第二に、隣家との境界線から十分に距離が離れている場所を選ぶ必要があります。万が一、防根処理を越えて地下茎が伸びたとしても、隣家の敷地に到達するまでの時間的猶予が生まれます。
そして第三に、水道管やガス管などの重要な埋設管が近くに通っていない場所であることも確認すべきです。地下茎がこれらのライフラインに影響を及ぼす可能性もゼロではないため、事前の確認が不可欠です。これらの条件をクリアできない場合は、地植えは諦めるのが賢明な判断と言えるでしょう。
トクサの代わりになる植物のおすすめ

トクサのような、すっとした縦のラインを庭のデザインに取り入れたいけれど、繁殖力のリスクは避けたいという方のために、代わりとなるおすすめの植物をいくつか紹介します。これらの植物は、トクサに似た雰囲気や特徴を持ちながら、管理が比較的容易です。
| 植物名 | 特徴 | 管理のしやすさ |
| ニューサイラン | シャープで直線的な葉が特徴。銅葉や斑入りなど葉色のバリエーションが豊富で、モダンな庭によく合う。株は大きくなるが、地下茎で広がることはない。 | ★★★★★ |
|---|---|---|
| カレックス | 細くしなやかな葉を持つグラス類。風にそよぐ姿が美しく、ナチュラルな雰囲気を演出する。種類が豊富で、繁殖力が穏やかな品種を選べる。 | ★★★★☆ |
| シュロガヤツリ | 涼しげな線香花火のような草姿が特徴。湿り気のある場所を好む。株分けで増えるが、トクサほどの猛烈な広がり方はしない。 | ★★★☆☆ |
| アガパンサス | すっと伸びた花茎の先に美しい花を咲かせる。花のない時期も、光沢のある帯状の葉が美しい。株でまとまって成長するため、管理がしやすい。 | ★★★★★ |
これらの植物は、いずれもトクサのように地下茎で庭中に広がっていく心配がほとんどありません。デザインの好みや庭の環境に合わせて選ぶことで、理想の景観を安心して楽しむことができます。
まとめ:後悔しないためにトクサは植えてはいけない
この記事を通じて、「トクサを植えてはいけない」と言われる多くの理由をご理解いただけたかと思います。植えて後悔しないために、最後に重要なポイントを再確認しましょう。
トクサを植えることには、その強すぎる繁殖力がもたらす様々なリスクが伴います。地下茎が広がる対策として防根シートの効果は限定的であり、根が張りすぎることへの注意点を軽視すると、コンクリートの壁を壊すといった深刻な事態も招きかねません。一度広がると駆除の方法は非常に困難で、隣の家とのトラブルに発展する可能性も否定できません。
また、スギナとの違いを理解していても管理は難しく、風水で縁起が悪いとされることや、ペットに対する微量な毒性の懸念もあります。植える場所を慎重に選んだり、増えすぎを防ぐ方法を講じたりしても、そのリスクを完全にゼロにすることは難しいのが現実です。
安全に楽しむためには鉢植えでの栽培が最も確実な方法ですが、もし地植えで縦のラインを演出したいのであれば、代わりになる植物のおすすめを参考に、ご自身の庭に合った選択をすることが賢明です。
- 繁殖力と管理の困難さ:トクサの地下茎による繁殖力は想像以上に強く、一度植えると管理と根絶は極めて困難です。
- 物理的な損壊リスク:建物の基礎や壁、配管などを破壊する可能性があり、修復に多額の費用がかかることがあります。
- 近隣トラブルへの発展:敷地を超えて隣家に侵入し、ご近所との関係を損なう深刻なトラブルの原因となり得ます。
- 安全な代替案の存在:鉢植えで楽しむか、ニューサイランなど、管理が容易で似た雰囲気を持つ他の植物を検討するのが賢明です。
- 総合的な判断の重要性:見た目の魅力だけで判断せず、長期的な視点で庭全体の環境や維持管理の手間を考慮する必要があります。
これらの情報を総合的に判断し、あなたの庭づくりが後悔のない素晴らしいものになることを願っています。


